年末恒例のイベントです。
「新米小僧の見習日記」さん(http://shinmai.seesaa.net/)がまとめを作ってくださっています。
ルール
・2014年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
ネタバレは回避してないのでそこはご注意ください。
お気に入り度の高いものほどなんとなく下のほうに置いています。
Fate/stay night [Unlimited Blade Works] #12 「最後の選択」
『Fate』という作品名を聞くとどうしても、聖杯戦争とか、マスターとサーヴァントの契約とか、英霊同士のバトルとか、そういうことに目が行きがちなんだけど、それだけじゃない。『Fate』は「萌えアニメ」としても一流だということを示したのがこの回。バッティングセンターでバットを振るうセイバー、デートと称して士郎をからかう凛、めちゃくちゃ可愛いではないか。そんじょそこらの萌えアニメで、キャラクターをこんなに可愛く描くことができているだろうか。
Free! -Eternal Summer- 10Fr 「涙のシックスビート!」
『Free!』の2期は残念ながら、部活ものの超名作であった1期には遠く及ばなかったような気がする。特に問題だったのが、主人公サイドである岩鳶高校のストーリーが物語性を欠いていることで、なんだか淡々と大会をこなし淡々と勝ち進んでしまった印象がある。試合は多く描かれているのだけど、一つひとつに意味がないのだ。遙の進路というテーマはあったものの、遙が何に悩んでいるのか僕にはまったく理解できず、やはり2期は蛇足だったなぁというのが正直な感想である。
しかし、岩鳶高校の物語が振るわない代わりに、鮫柄学園側は新キャラの投入でなかなかに盛り上げてくれた。特に第10話の地方大会でのリレーは、宗介の事情が明らかになったことで8人全員にとって意味ある対決となっていて良かったと思う。
桜Trick Trick6 「文化祭だよ☆お泊まりです」「文化祭だよ☆本番です!」
『桜Trick』の目玉はキスシーン。ということで最もお気に入りのキスシーンがあった回を選んでみた。第6話Bパートの、文化祭のバンド演奏を聞きながら、体育館の2階ギャラリーでカーテンを引いてするキス。シチュエーションがいいし、演奏や照明がキスの演出になっているのが見事。
ラブライブ! 2期 第5話 「新しいわたし」
この回を選ぶのにはちょっと躊躇いもある。というのは、僕はこれがあんまり倫理的に良い話だとは思っていないからだ。一般論として、「女の子は可愛くならなければ」っていう強迫観念を植え付けるべきではないし、アイドルだって「可愛さ」じゃない他のいろんな魅力を追求していいのだ(これは『ラブライブ!』全体の問題でもあると思う。アニメ版でμ'sが踊る楽曲や衣装は「可愛さ」を目指したものに偏りすぎていないだろうか。たとえば「かっこいい」μ'sもあっていいはずだ)。
しかしそれでもこの回を選ぶのは、この回が2期では珍しくμ's内の人間関係の起伏がちゃんと描かれていた回だったからであり、アイドルものなのにグループ外との人間関係がまともに描かれない『ラブライブ!』という作品において、グループ内人間関係のリアリティこそ欠かしてはならない重要な要素だと考えるからだ。
原案の公野櫻子が述べていたように、もともと『ラブライブ!』は「女の子のリアルな関係性とか立ち位置」(『電撃ラブライブ! 3学期』p.42)を強く意識した作品であった。実際、アニメ版1期はそのような作りになっていたと思う。たとえば、メンバー7人時代のμ'sにおいて、2年生3人はまとまって行動することが多く、唯一の3年生であるにこは1年生たちと絡んでいることが多い。そして前者のグループと後者のグループのあいだには少し溝がある。中学高校の部活で実際にありがちな構図の一つに収まっているのである。そういった人間関係の意外なリアリティが描かれていたからこそ、ファンはメンバー間の関係性を洞察することに熱心になった。「にこまき」や「ほのえり」といった百合カップリングは、そういった洞察からファンが想像を広げたことで生まれたものであり、だからこそリアリティと説得力のあるカップリングになっているのである。
しかし、話が進むにつれμ'sのメンバーはみな等しく仲良しになってしまい(険悪になる話はなかなか描けないから仕方ないこととも言えるが)、2期のμ'sの人間関係は見事に平坦になっている。そこに残ったのは、絶対的リーダーとしての穂乃果と、他8人のメンバーという、たったそれだけの構図である。穂乃果が何かすごそうなことを言い、他8人が一様にそれに感動する、というパターンの話が2期には非常に多い。こうなってしまったμ'sには、人間関係のリアリティも、百合カップリングを見出す楽しみもあったものではない。
2期で唯一の希望が見出だせるのは第5話である。2年生3人が修学旅行でいなくなったことで、構図に変化が生まれた。さらに、絶対的リーダーであった穂乃果がいなくなったその空白の中心に「他8人」の一人だった凛を無理やり押し込んだことで、平坦だった人間関係にひずみが生まれた。凛がにこと真姫の喧嘩の板挟みになったり、花陽が凛を助けようとして穂乃果に相談を求めたりと、他のエピソードでは見られない、リアリティのある関係性が垣間見えていた。これはつまり、メンバーの配置を変えることで、普段は水面下に隠れている人間関係が露わになるということだ。これは今後『ラブライブ!』の物語をつくるうえで、ぜひ参考にしてほしい教訓である。現実のアイドルを見てもわかるように、ファンはメンバー間の関係性を読み取ることに喜びを見出すのだから。
ヤマノススメ セカンドシーズン 新十合目 「富士山って、甘くない…」
『ヤマノススメ』はど安定のゆるふわアウトドアアニメ。基本的にストーリーはあってなきがごとしだが、それだけに富士山編であおいに容赦なく挫折を経験させた展開にはちょっと驚いた。登山に苦痛しか感じなくなり、星空を見ても感動せず、山を登りに来たことを後悔するあおいの心情をしっかり描いており、「なぜ山に登るのか」という問いと向き合うストーリーにつなげたのは素晴らしかった。
ログ・ホライズン 第2シリーズ 第5話 「クリスマス・イブ」
主君と離ればなれになり孤独のなかで自らの存在価値を求めもがくアカツキさんが、クリスマス・イブの夜に現れた連続殺人鬼と路地裏で邂逅し対決するエピソード。何が良いのかというと、とにかく今説明した各要素の組合せが素晴らしく、独特の雰囲気があるということに尽きる。力及ばずアカツキさんが倒れるラストまで含めて、アカツキさんの苦悩と苦闘を象徴する一話であった。
悪魔のリドル 第二問 「胸の中にいるのは?」
黒組のバトルロワイアルが開幕するのとともに、兎角さんが晴ちゃんの側に寝返ることを決意したエピソード。緊張感があってバトルロワイアルものの導入として申し分なく、守護者と守られる者という珍しいタイプの百合による魅力を本作品に予感させた。だが、残念ながら『悪魔のリドル』の面白さはここがピークであり、これ以降の本作品はここで提示した方向性に対して奇妙な逆走(守護者が守られる者に守られる、自称暗殺者たちによるなんちゃってデス・ゲーム)を始めてしまうのであった。
以下が今年のベスト3。
凪のあすから 第十五話 「笑顔の守り人」
5年ぶりに目を覚ましたが、変わってしまった世界と人々に愕然として目を閉ざす光の話。光の戸惑いが氷解するラストの疾走に、美海が旗を振るシーンが最高に気持ち良い。美海がカンチョーをくらう場面がなかったことだけが残念である。
SHIROBAKO #12 「えくそだす・クリスマス」
今年一番の、自信を持ってオススメできるアニメがこの『SHIROBAKO』である。最初から最後まですべてのエピソードがとにかく面白いので、アニメ制作というテーマに少しでも興味がある人だったら誰が見ても損はないはず。この回は完璧な最終話だと心の底から感心していたのだけど、実は2クール作品で1クール目の終わりだった。贅沢すぎる。
そして今年のベストエピソード。
ソードアート・オンラインU #24 「マザーズ・ロザリオ」
『ソードアート・オンラインU』のマザーズ・ロザリオ編は、僕にとって特別な作品といえるものだった。SAOがはじめてネトゲの魅力を描き、ネトゲプレイヤーの価値を描き、そしてネトゲだからできることを描いた作品だと思う。マザーズ・ロザリオ編のエピソードはどれも甲乙つけがたいが、ネトゲのなかで現実の人の死を看取るなどとという、きっと多くのまともな人間からは馬鹿げていると思われるようなことを、真剣に本気で描いた最終話に敬意を表して、今年のベストエピソードに選びたい。